〜 人々を煽動する者・『ぬの巻』 私の名は・・・〜
ホームの端の避難した人たちに向けて口を開く
『私は○○○○と申します。■■という武術をやっており、++++という経歴があります。』
『皆さんの安全を保障します。私がもどってくるまでここからでてこないでください。』
名前と流派を名乗ったのは氏素性をしって頂き、安心してもらうため。
そして自分自身に強力な暗示をかけるのが目的だった。
流派名と自らの名前を出しての約束をする以上、失敗は許されない。
普段ならばやってはいけないことだ。今までやったのはこの一回だけだ。
しかしあえてやった。
気持ちに揺らぎがあるときにこれをやると自分の精神に揺らぎがでる。まともな精神状態でなくなる。
だが、ある程度の強力な自己ができているときにやるとハラが面白いぐらい据わる。
正直な話、失敗したら死ンでもいいとすら思っていた。
私にはハラをきった先祖がいるらしいが、こういうときにはハラが切れるのかな、ともおもった。
逃げてばかりの自分がそういう気持ちになれたというのはいま思い出しても不思議な思いだ。
普段は死ぬぐらいなら逃げてやる、とおもっているくせにね。
ただし、このときの自分の精神状態がただの自己陶酔の可能性があった。
自己陶酔のためにやってもロクなことはない。
念のために首と頭の間をさわってみる。
私にとっては精神の緊張や自我の強さがでると硬くなる場所だが、そこの筋肉は柔らかくゆるんでる。
興奮すると視野が狭くなる、というが視野も狭くない。
これから使うことになる脳のまわりの血流も圧迫されてない。
興奮してない。
精神だけが落ち着いてる。
これならいける!
いかに沈黙と呼吸、眼力をつくりだすかが勝負だ。
興奮せず、息も乱れず、目にリキミがない。
靴紐を二重に結び、歩き始めた。
そう、この瞬間まではすべてが万全に進んでいたのだ。
このときまでは
(『るの巻』に続く)


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